勉強法

宅建初学者でも理解できる、取得時効のまとめ【宅建・権利関係】

こんにちは、あかつき塾の小林です!

権利関係の中でも、比較的馴染みはあるけれど、実際に出題される問題が難しいのが「時効」の分野です。

特に、令和2年4月から改正民法が施工されたため、時効に関しても変更されている箇所が多々あり、今まで受験してきた受験生を苦しめる要因となっています。

そこで以下では、取得時効を理解する上で大事なポイントを示していきます。

時効の基本

時効とは

時効は、ある一定期間続いた状態を、本来の権利義務関係にかかわらず、合法的に認める制度をいいます。

取得時効と消滅時効

取得時効とは、ある状態が一定期間続いた場合に、権利を取得できる制度をいいます。

これに対して消滅時効とは、一定期間権利を行使しなかった場合、その権利が消滅する制度をいいます。(消滅時効についてはこちら

時効を学習する際、上記の取得時効と消滅時効が混同してしまう場合がありますので、読んでいるテキスト・解いている問題はどちらの時効の論点なのかをしっかりと押さえるようにして下さい。

取得時効に関する論点

時効によって取得できる権利は、所有権以外にもあります。(賃借権など)

ですが、今回は宅建試験でも頻出である、所有権の取得時効に関して見ていきます。(※以下では、下記の図を例にしております。)

所有権の取得時効が完成するための要件

所有権の取得時効が完成するためには、

  • 占有者が所有の意思をもって
  • 平穏かつ公然
  • 他人のものを占有(事実上支配)すること

が要件となっています。

上記の例でいうと、Bが本来の所有者Aがいるにもかかわらず、Aから強制的に奪うことなく、所有の意思をもって甲土地を占有し続ける場合、取得時効が成立する要件を満たします。

所有の意思意思について

まず上記の中で大事なのが、所有の意思をもっていること、です。

上記の例でいうと、Bが所有者として振舞っていることが必要です。

ですから、下図のようにAから賃貸しているだけでは、所有の意思を持っているとはいえません。

占有する期間について

続いて、上記要件があった状態で一定期間占有する必要があるわけですが、占有する者が占有し始めたときに、「自分が所有者ではないこと」を知っていたかどうか、によってその期間が違います。

すなわち、占有開始時に

  • 善意無過失であった場合には、10年間
  • 悪意または善意有過失であった場合には、20年間

と規定されています。

下記の図でいうと、Bは甲土地の所有者ではないことを知っているので、Bが甲土地を時効取得するためには、占有開始から20年間甲土地を占有し続ける必要があります。

占有が承継された場合

上記の例では、一人が取得時効の要件を満たした状態で継続して占有した場合ですが、売買契約があった場合など占有が承継された場合でも、取得時効が完成することがあります。(※以下では、下記の図を例にしております。)

前占有者の占有期間、善意・悪意も承継する

上記にも書いたように、取得時効が完成するためには

  • 占有開始時に善意無過失であった場合には、10年間
  • 占有開始時に悪意または善意有過失であった場合には、20年間

が必要です。

今回の場合は、Cは占有を開始してから5年しか経過していませんので、取得時効は完成しておりません。

ですが、CはBの占有期間を承継するので、BとCの占有期間を足し合わせて20年間占有を継続していることとなります。

また、CはBの悪意の状態についても承継するので、Cが取得時効を主張するためには、合計で20年の占有期間が必要です。

以上のことにより、Bから売買契約により占有を承継したCは、取得時効の完成を主張することができます。

他の具体例

上記の例以外にも、いくつかの場面を想定して図にしてみました。

是非参考にしてみて下さい。

時効取得と物権変動

権利関係の問題では、時効取得と絡めて、「不動産の物権変動」の複合問題が多く出題されます。

詳しく物権変動の記事に書いておりますので、以下ではポイントのみを示していきます。(物権変動に関する記事はこちら)

時効完成前の物権変動

時効完成前にAからCへ甲土地を譲渡した場合、BにとってCは当事者となるので、Bは登記がなくても甲土地の所有権をCに主張することができます。

時効完成後の物権変動

時効完成後にAからCへ甲土地を譲渡し登記をした場合、BとCは「対抗関係」になるので、Bは登記をしたCに対して甲土地の所有権を主張することはできません。

いかがだったでしょうか。

取得時効を理解するためには、まず第一に消滅時効と混同しないように注意します。

その上で一つ一つの要件を丁寧に覚えていき、実際に出題される問題に当てはめていきましょう。

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